ライター 阿部真麩美
南米コロンビアで小型機が墜落し、行方不明になっていた子ども4人が、約40日ぶりに救助されたというニュースが飛び込んで来ました。
「よかった」と思うと同時に「命に別条はないの?」「どうやって過ごしていたの?」など、頭の中は疑問符だらけ。
しかも、13歳、9歳、4歳、1歳のきょうだいと聞くと、オムツも取れていない1歳児の世話をしながら生き延びた、ということになります。
子ども達はジャングルで生き抜く術をもつ先住民族で、祖母から食料の調達の仕方や体を休めるシェルターの作り方といったサバイバル術を伝えられていたということですが、ワニやアナコンダがいる密林の中で全員無事に発見できたのは、奇跡の上に奇跡が重なったくらいありえないことだそうです。
困りごとは全部スマホで解決策を検索し、自分で工夫することのない暮らしを反省しながら、子ども達の「生きる力」に畏怖を覚えました。
文部省では10年に1度、学習指導要綱を改定しています。
直近の改定は2020年で、「生きる力」をはぐくむという理念を実現することが盛り込まれました。
この場合の「生きる力」とは、「人工知能の普及やインターネットの生活への浸透により、社会や生活が大きく変わると予想される時代に変化を前向きに受け止め、人生をより豊かにしていくためにどうすべきか主体的に考え出すことができる力」のことだそう。
なるほど、かつてはコンクリートジャングルとも言われた過密都市では、ジャングルでのサバイバル術よりもIT社会で生き残る術の方が優先順位は高そうです。
では、猫の生きる力とは、どんなものでしょう。
昨年、このコラムで愛猫のデンちゃんがゴールデンウィークに預け先の私の実家から家出して、10万円の懸賞金をつけた結果、ひと月半ほどで発見できたことをお伝えしました。
【行方不明の猫を探す時に、押さえておきたいポイントはこれニャ!】
コロンビアの4人きょうだいと、時期も期間もほぼ同じです。
デンちゃんは叔母の家で生まれ、2ヶ月ほどでうちに来て、ずっと家猫だったので外で夜を明かしたことさえない、箱入り娘です。
食い意地は張っていたので、長電話しているすきにケーキのクリームを舐めたり、生ゴミからサンマの頭をかすめたりといったことはありましたが、自分で虫を捕まえたこともない環境で育ちました。
ですから、デンちゃんが見つかったと聞いたときは、迷い猫として飼っていた人が連絡をくれたのだろうと思い込んでいました。
ところが、電話の相手は車のスクラップ工場。
積み重なった車の中に、10万円の猫らしきものを見た、と誰かが言い出し、スタッフ総出で何日もかけて探し出してくれたのだとか。
ということは、デンちゃんは野良猫をしていたことになります。
街中の公園での野良なら、エサをくれる人もいたかもしれないけれど、郊外の民家もないところで、どうやって生き延びていたのでしょう。
もちろん、ずっと野良をしていたのではなく、しばらくはどこかで飼われていたのかもしれません。
猫が言葉が話せるのなら、一番聞いてみたかったことです。
発見当時は、撫でると肋骨がわかるくらいの痩せ方で、もう少し遅かったら、命も危なかったかもと思わせるほどで、スクラップ工場の方には感謝するばかりです。
「生きる力」という言葉には、肉体がもつ命に加えて、生き抜いていこうとする強い意志とポジティブなエネルギーを感じます。
それさえあれば、どんな社会でどんな状況にあっても人生をまっとうできるでしょう。
普段は、「ダメな子ほど可愛い」の理屈でしか誉めるところが見当たらなかったのですが、デンちゃんの「生きる力」の強さだけは誰にも負けないと、亡くなった今でも自慢です。
コロンビアの子ども達も、40日を切り抜けた「生きる力」で、これからの人生を切り開いていってくれると信じています。
お客様の声より>>カリカリーナLuceで寛ぐムギちゃん
#45 過去も未来も現在も、世の中がどんなに変わっても猫への愛は変わらニャい!のだ。
#43 解明。猫がこんなに喜ぶのは「強化ダンボールの質」が決め手だったからニャんだ!
#42 右からも左からも。猫カフェで、猫の日キャンペーンにぴったりな「猫を愛でる写真」が撮れた!