ライター 阿部真麩美
2024年を目処に、新しいお札が発行されます。
みんな大好きな1万円札の肖像は、渋沢栄一。
生涯で500あまりの会社を設立した実業家です。
「日本資本主義の父」と呼ばれるだけあって、金融機関や旅行会社では、渋沢栄一をテーマにしたセミナーをあちこちで開催しています。
彼を主人公とした大河ドラマでは、家業だった養蚕業での苦労が丁寧に描かれていました。
最近まで知らなかったのですが、養蚕業ではネズミはカイコの天敵だそう。
なので、どの家でもカイコを守る番人として猫が飼われていました。
それだけでなく、猫はお札や絵馬になり、家の柱や蚕室に貼られたり、神棚に上げられたりして豊蚕を祈願されていたんですって。
そう、猫は養蚕の守り神だったのです。
養蚕業の多い地域では、仏像のように猫の木像や石像が奉納され、今でも地域の人々から缶詰やお花が供えられて、大切にされているようです。
仏教では嫌われている猫ですが、神道では神様として拝まれてきたなんて、嬉しい話です。
そもそも養蚕は、紀元前200年くらいに稲作と一緒に中国から伝わって来たといわれ、奈良時代には全国に広がり、税金として納められました。
室町時代には西陣織や京ちりめんが誕生し、能装束や小袖など豪華さを極め、権力を誇示する道具の一つに。
江戸時代には幕府が養蚕を奨励し、明治に入ると殖産興業として関東や中部地方を中心に近代的な製糸工場が建設されました。
この頃から昭和初期まで、生糸は日本の輸出品目の40〜70%を占めていたとか。1900年頃には日本は世界一の生糸輸出国となり、稼いだ外貨で近代化に必要な機械類を買い揃えていったのです。
そう、カイコは日本の近代化を支えた屋台骨。
つまり、そのカイコを守った猫神様は、屋台骨の屋台骨で、日本の近代化の恩人、いや恩猫とも言える存在だったのです。
それを裏付ける資料が、江戸時代後期に平戸藩主だった松浦静山(まつらせいざん)の随筆「甲子夜話(かっしやわ)」です。
猫は養蚕現場において最も重用され、価格が高騰した時には「上品の所にては、猫の価格五両位にて、馬の価格は一両位なり」とあり、しかも腕の良い猫、つまりよくネズミを捕る猫は、飼い主にお金を払えば貸してもらえる「雇い猫」というシステムが存在していたことが記されています。
なんと、ネズミを捕る猫が田畑を耕す馬の5倍の価値!
その上、貸し出すだけで稼いでくれる猫なんて、素晴らしいじゃないですか。
話は逸れますが、皇室でも歴代の皇后陛下がカイコをお育てになっていますが、飼育されている中に「小石丸」と言う日本純産種のカイコがいます。
糸が細く収穫量が少ないため、養蚕業者の間では改良品種に置き換わっているのですが、皇室でだけ飼育され続けているそう。
その理由は、当時の皇后陛下だった美智子上皇后の「日本の純産種で繭の形が愛らしく、糸が繊細で美しい。古いものを残しておきたいので、もうしばらく育てましょう」とのお言葉があったから。
そして正倉院の宝物を復元するにあたって、現代の生糸ではどうしてもできなかったものが、皇后陛下の育てた「小石丸」の糸を使うことでやっと完成したというニュースがありました。
2019年に報じられたので、覚えている方も多いかもしれませんね。
それにしても、光明皇后が作った正倉院を1300年後の皇后陛下が支えているって、雄大な歴史のロマンを感じませんか。
と言うことで、日本の歴史に欠かせない存在であることが明らかになった猫様に、改めて感謝したいと思います。
皆様も、ご自宅の猫神様にカリカリーナを奉納してはいかがでしょう、なんてね。
お客様の声より、チンチラシルバーのジェラート君
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